こちんぴシネマ
 このコーナーはオレが見た映画・ビデオの感想を書くコーナーです。
 映画館に行く際や、レンタルビデオ店でビデオを借りる際の参考にしてください。
 ちなみにネタバレだ、(#゚Д゚)ゴルァ でお届け。
Movie 123

ラスト・サムライ


あらすじ

 南北戦争で英雄となり、その後、インディアン討伐で罪もないインディアンたちを不本意ながら殺すことになって酒びたりの日々を送るオールグレン(トム・クルーズ)。
 彼は日本政府の近代化を考えている大村(原田真人)のオファーを受け、軍隊指導の為日本に来る。
 大村の所有する鉄道が勝元(渡辺謙)率いる侍たちの一団に襲われ、オールグレンは大村の命を受けて未熟な歩兵達を率いて鎮圧に向うが、舞台は壊滅的な被害を受け、オールグレンは捕虜となる。
 勝元はオールグレンを手厚く看護するように妹のたか(小雪)に命じる。
 最初は戸惑うオールグレンであったが、侍たちの生き方に次第に共感するようになり、彼の心も癒されていくが・・・。
 
 

 日本人必須科目。

 さて、散々このHPでも取り上げた「ラスト・サムライ」、いよいよ公開。
 正直、期待も大きかったが不安が大きかったのも事実。
 だってさ、今までのハリウッドでの「日本」の扱いの悪さ、勘違いっぷりを考えるとね・・・。例えば、昔見たショー・コスギの映画では「金閣寺が画面に登場(テロップは「東京」)。中では白塗りの芸者を侍らせたビジネスマンが商談中。そこに忍者が現れ、カンフーっぽい動きでビジネスマンを暗殺」という笑うしかないような描写だったし、現代劇でも日本人はヤクザかメガネかけたサラリーマンor観光客。武器は謎のカンフーと日本刀。何の映画だったか忘れたが悪の日本企業の作った殺人ロボットが「カンフーと青龍刀を駆使するニンジャロボ」だったこともあったなぁ。
 そんなハリウッドが作るサムライ映画。不安視しないほうがおかしいし、「どーせ、この映画だってトンデモ映画でしょ?」とか思ってる人もいることだろう。
 オレだって、楽しみにしつつもネット上や雑誌で見た写真で道の脇に大仏がいたり、忍者が出てくるカットを見た時には「やっぱり、ダメなのか?」と思ったもの。

 しかし、見終わって断言できる。
 「よくやった、ハリウッド」
 たしかに細かい部分での間違いはある。日本人から見て「へっ?」と思うシーンもあるだろう。
 それにしてもこれ以上、「日本を舞台にした時代劇」でこれほどの描写をした実写時代劇はあったろうか?
 アメリカのスタッフのリサーチや考証の確かさ、謙さんや真田さんを始めとする日本人スタッフの努力も大きい。(特に真田さんはいろいろな資料をロケ地に持ち込み、徹底的に意見したそうだ。やはり着物の着こなしや、殺陣、所作など細かい部分はハリウッドスタッフの間違いが多かったようだ)
 この映画の為にトム・クルーズは別荘に道場を作って8ヶ月にわたり殺陣の練習を積み、甲冑を着て動けるように11kg筋肉をつけたそうだし、真田さんがある箇所に指摘をしたらいろんな資料を見せられて正しいことを照明されたらしい。それだけハリウッドは本気だった、ということだ。
 明治の町並みや村のセットの見事さは映画を見てても圧倒される。
 ハリウッドスタッフが日本をリスペクトして間違いが無いように作り、日本人スタッフが間違った日本観が海外に広まらないよう自国の文化に誇りを持って協力して出来た映画ともいえる。
 逆に、これを見た日本人のほうが自国の文化を間違って解釈してた部分も多そう。
 例えば、「真田さんの着てる甲冑は中国のヨロイか?」と書いていた映画雑誌があったが、アレは魚鱗甲冑という型(有名どころでは、竹中半兵衛も着用してたと伝えられ、現存している)の甲冑だし、最期に出てくるあるシーンに対して「土下座」と書いている雑誌があったが、おそらくアレは座礼だと思われる。(座礼と土下座はカタチは似てるが意味合いは違う)
 天皇が巫女さんみたいな姿なのも当時の天皇の普段着として正しいらしいし、村の入り口に大鳥居があるのも現代人の目から見て違和感があるかもしれないが、当時の村のあり方としては普通(今でも大鳥居ある町もあるでしょ?)
 まぁ、フィクションなんでいろいろと目くじら立てるのも何だが、それでもイロイロ思うところがある人はココ参照。何故に甲冑着てたのかとかもわかるはず。(というか、明治初頭の「神風連の乱」だって甲冑着た武士が刀と弓で武装蜂起して近代兵器に立ち向かった乱ですがね)
 ・・・。まぁ、どーみても南方のシダ植物や蘇鉄の木があったのは目をつぶれ。(ロケ地:ニュージーランド)

 さて、前置きが長くなったが映画本編について。
 内容的には正直なハナシ、目新しさは特に無い。王道感漂う作りだし、「ダンス・ウィズ・ウルブス」に近いハナシだ、という意見も多々ある。
 日本人から見てもずいぶんと日本の侍を美化してるかなぁ?と思ったりもする。
 しかしながら日本人のDNAがあるならば、この映画を見て何かを感じるはずだ。日本人の魂に訴えてくる、とでも言えばよいだろうか?
 何と言うか、日本人の美意識に訴えてくる部分が大きい。侍たちが甲冑に身を固め、戦に望むシーンで興奮に打ち震えない日本人はいないだろうと思う。
 逆に言うと日本人以外の評価は微妙かもしれない。特にアメリカの。
 勝元率いる侍たちの行動はいわばテロのように映る(日本人的に見れば勝元の行動は気概に満ちたものに見えるのだが。ちなみに過去設定では大村は外国に九州割譲を条件に日本の近代化を推し進めようとする人物で、勝元はそれを止めようとする、という設定もあったらしい)し、最新兵器に特攻覚悟で突っ込む姿は最近のアメリカには自爆テロを思い起こさせるような部分もあるのかもしれない。
 実際、アメリカのマスコミの評価の中にはずいぶんと厳しい(というか的外れな論点の)評価もあるようだ。
 だが、オレはいい映画だったと胸を張って言える。
 見てて思わず泣いてしまったが、悲しいとか、感動して涙が出たというよりは魂を揺さぶられた涙だと思う。それほどに心に響いた。

 俳優について。
 トム・クルーズの演技は当然よい。つーか、殺陣上手すぎ。日本人でもトムより殺陣が出来ない役者はたぶん多いぞ。
 日本語も流暢だったし。「キル・ビル」と違って、この映画の場合、日本語で笑いを取ってしまうことがあるとブチ壊しだが、その心配は無い。
 真田さんの演技もストイックな武士(もののふ)、というカンジ。さりげなく茶の湯のシーンや舞を舞うシーンが入ることで剣の達人である一方、深い教養を身につけた人物であることがうかがえる。
 小雪は日本女性のよさを上手く出してる。トムと心が通じ合っていき、最終的に想い合うのだがその気持ちの高ぶり方が日本的というか、美しい。
 今回の悪役である原田役は原田真人。実は本業は映画監督。コレがすさまじく憎たらしい。モデルとしては大久保、木戸、岩倉らの明治の政治家+岩崎弥太郎(三菱財閥の祖)といったところか。いい演技だなぁ、と思った。なんつーか、「目的は理解できるが、間違ってる」感というか。侍側が反感持ちそうな演技だし。

 で、特筆すべき2人について。
 1人目は福本先生。トムの護衛の侍。
 時代劇ファンとしては先生がハリウッド映画に出てる時点で泣けるのだが、存在感が素晴らしい。つーか、かなり目立つのだよ、先生の役。
 セリフはたった一言しかないのだが、このシーンがすさまじく泣ける。
 2人目は渡辺謙。
 謙さんの演技に関しては「アカデミー助演男優賞も狙える」みたいな記事が新聞にも出たが、オーラというか、謙さん演じる勝元の人間の大きさが画面から伝わってくるし、トムと一緒にいるシーンではトムを食ってると思う。(トムの演技は無論、すばらしいのだが)
 正直言うと、謙さんの今回の演技が特別な訳じゃなく、日本のドラマや映画で見せる素晴らしさとさほど違いは無いと個人的に思う。鬼気迫るカンジ、という事で言えば「北条時宗」での死ぬ間際の演技(いわゆる、「謙さん、全身金粉ショー」)のほうがすごかったし。
 ただ全身から「渡辺謙」ってカンジの雰囲気が出てた。それこそ大スター、トム・クルーズを圧倒するような雰囲気が。
 侍たちの長であるだけでなく、天皇の教育係も勤めていた勝元のカリスマ性が謙さんの周りでオーラのようになっているのだよ。
 これから「世界の渡辺謙」になっていくのだろうか?

 最期に残念なことが。
 と言っても、この映画に関してではない。
 どうして日本でこんなに素晴らしい時代劇が作れないのか?という残念さ。
 コレに関しては参加した日本人スタッフもインタビューで答えているが、時代劇好きとしてもこんなに素晴らしい時代劇を作ったのがハリウッドだということがショック。
 日本の時代劇に携わる人たちにはもっと頑張ってもらいたい。